新連載企画

【第六章】筋肉と芯のちがい

太郎は今日も河川敷に立っていた。

だが、この一週間で彼の中の何かが少し変わっていた。

最初は“修行ごっこ”のつもりだった。

なのに、気づけば朝の立つ時間が一日のリセットになっていた。

(おかしいな……立つだけなのに、心が落ち着くんだよな。)

そんな太郎の背後から、声が飛んだ。

「お、だいぶ“立ち姿”が良くなってきたね。」

振り向くと、いつものように立芯が立っていた。

今日も風のように現れる。

忍者説、濃厚である。

「師匠、最近ようやく“静けさ”に慣れてきた気がします。」

「うん、それはいいね。じゃあ今日は、“筋肉と芯の違い”を体で感じよう。」

「え、また新テーマ……!?」

立芯はにやりと笑い、太郎の肩を軽く押した。

「ほら、押し返してみて。」

「お、押し返す!? はいっ!」

太郎は全力で力を込めた。

だが、立芯はまったく動かない。

まるで地面と一体化しているようだった。

「ちょ、なにこれ!? 師匠、何キロあるんですか!?」

「体重? たぶん君より軽いよ。」

「嘘でしょ!? 完全に壁じゃないですか!」

立芯は軽く笑って、今度は太郎に言った。

「じゃあ、僕を押してみて。」

「え? 今押しましたよ!?」

「いや、次は“芯”で押す。」

「……芯?」

立芯は一歩下がり、静かに立った。

呼吸がゆっくりと落ち着く。

風が止まったように感じる。

「いいかい、太郎くん。

筋肉は“力を出す”。芯は“力を通す”。」

「……力を通す?」

「筋肉は自分で頑張る力。

芯は“地球とつながる力”。

僕はただ、地面に委ねてるだけ。」

そう言うと、立芯は太郎の手のひらを軽く押した。

――ドンッ!

太郎の身体が思わず一歩、後ろへ下がる。

「な、なに今の!? 今、全然力入ってなかったですよね!?」

「そう。芯は“抜くほど強い”んだ。」

「……筋肉は“締める”のに、芯は“抜く”?

そんな矛盾、あります!?」

「あるさ。

筋肉は“守るため”の力、

芯は“委ねるため”の力。」

太郎は黙り込んだ。

脳がバグを起こしている。

立芯は、太郎の肩に手を置いた。

「君の人生、ずっと“守るため”に力を入れてきたでしょ?」

「……はい。

ミスしないように。負けないように。

ずっと気を張ってました。」

「うん、それは悪くない。

でも、守るだけじゃ“育たない”。

力を抜いて、流れに乗る時、人は“芯”を思い出す。」

風がまた、太郎の髪を揺らした。

力を抜いた足裏から、じんわりと温かさが伝わってくる。

(あ……地面、押してないのに支えてくれてる。)

立芯が穏やかに言った。

「それが“芯”の始まり。

頑張らなくても、世界が支えてくれる場所。」

太郎はふと笑った。

「……なんか、師匠。

僕、初めて“筋トレしたくない”って思いました。」

「いいね。君の中の“本当のトレーニング”が、始まったんだよ。」

「……でも筋トレやめたら、腹筋なくなりますよ?」

「安心しな。芯が通れば、腹も勝手に割れる。」

「……師匠、それはもう宗教の域ですよ。」

立芯は笑いながら、夕陽に向かって立った。

その背中は、まるで一本の柱のように美しかった。

《第六章の気づき》

筋肉は「頑張る力」。

芯は「委ねる力」。

本当の強さとは、“力を抜いても倒れない自分”を思い出すこと。

【第七章】立つだけの日々に起きた奇跡

【お知らせ】「月廻りの会《新月》《満月》」参加者募集中

この物語にどこか心が動いた方へ。

“立つ”ことから始める、心身の整えと深い対話の場──
それが「月廻りの会《新月》《満月》」です。

毎月、月のリズムに合わせて開催される少人数制の特別な時間。
静かに立つことから、内なる声を聴き、言葉にならない想いを受けとめ合います。

ご参加を希望される方は、まずは立芯の【公式LINE】にご登録の上、
メッセージで「月」と送ってください。

▼公式LINEはこちら
https://lin.ee/KH3YisY

ご一緒できることを、心から楽しみにしています。