新連載企画

【第七章】立つだけの日々に起きた奇跡

朝の通勤ラッシュ。

太郎はいつもの満員電車の中にいた。

だが、今日はいつもと少し違っていた。

(あれ……押されても、前よりイライラしない。)

数週間前までなら、他人のリュックが肩に当たるだけで眉間がピクついていた。

けれど今は――呼吸が、ゆっくり。

足の裏が、地面を感じている。

(これが“芯”の力ってやつか……いや、まさかね。)

電車を降りて会社へ向かう途中、後輩が駆け寄ってきた。

「先輩、最近なんか雰囲気変わりましたね!」

「え? そうか?」

「前はピリピリしてたのに、今は“落ち着いたボス感”あります。」

「……ボス感!?」

「はい。あと、筋トレやめました?」

「いや、それは……(ほぼ立ってるだけだが)」

立芯に言われた“やる気を出さない修行”を続けてからというもの、

太郎の生活は不思議なくらい穏やかになっていた。

朝は5分立つ。

昼休み、人のいない屋上で2分立つ。

夜、歯を磨きながら1分立つ。

ただそれだけ。

なのに、毎日少しずつ「何か」が変わっていた。

肩こりが消え、眠りが深くなり、イライラが減った。

なにより、「頑張らなきゃ」という声が、静かに遠ざかっていった。

ある日、太郎は思い切って立芯に聞いた。

「師匠、なんか最近、いろんなことが上手くいくんですよ。

仕事も、人間関係も、体調も。

でも、“立つだけ”で、ほんとにそんな効果あるんですか?」

立芯は川の方を見ながら、いつものように笑った。

「あるよ。だって、“立つ”って、“整う”だから。」

「……整う?」

「身体が整えば、呼吸が整う。

呼吸が整えば、心が整う。

心が整えば、世界が整う。

全部、同じ一本の線なんだ。」

「……全部、つながってるんですね。」

「そう。“立つ”って、自分と世界の“通話状態”を保つことなんだ。」

「地球Wi-Fi理論、まだ生きてた!」

「もちろん。電波状況は常に良好だよ。」

太郎は吹き出した。

でも笑いながら、心の奥で確かに“何か”が通じていた。

(立つだけで、世界が変わるなんて――最初は信じられなかった。

でも、もしかして俺が変わったから、世界が変わったのかもしれない。)

その日の帰り道、夕暮れの河川敷で太郎は一人で立った。

もう師匠はいない。

だけど、心は静かで、空気は澄んでいた。

風が頬をなで、足元を流れる草の音が聞こえる。

遠くで少年たちがキャッチボールをしていた。

そのボールが、一度大きく弾んで、太郎の足元に転がってきた。

「おじさん、それ取ってくださーい!」

太郎は笑って、ボールを拾った。

その立ち姿が、まっすぐで、美しかった。

《第七章の気づき》

奇跡とは、何か“特別な出来事”ではない。

“当たり前のことを、心を込めて行う”とき、それがすでに奇跡になっている。

次回【第八章】僕が太郎に託したこと

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