何かを行おうとするとき、全員でスタートラインに位置につき、「ヨーイドン」で始まるような光景をイメージする人は少なくないのではないでしょうか。ある意味一般常識であり、公平で透明性があり、特に疑いようのないような感覚だと思います。
スポーツの世界などがそれを大いに表しており、同じ服装、同じルール、同じ場所で「ヨーイドン」で始まる。そこからお互いに全力で競い合い、勝ち負けを決め、勝者が決まり、敗者が生まれる。そういったことが、脈々と受け継がれてきました。
しかし、世界を見渡すと、そうではないことが多々あります。富んだ国があれば貧しい国もあります。その中で争いも多々起きていますが、そこに平等や公平という概念は存在しません。そこは強い者が勝ち、弱い者は虐げられる。そういった構図が歴史上ずっと行われてきました。
その中での真理の一つとして、常に先手を取っている者が勝者になるという事実があります。これはいかに「すでに始まっている」という状態を作るか、ということになります。
例えば、A地点からB地点まで行くという目的があったとき、みんなで並んで「用意ドン」とする前に、すでに走り始めている者がいたとしてもいいです。あるいは、バイクに乗っても、車に乗っても、それこそ飛行機に乗っても構いません。
何でもありで、B地点に先に行った者が勝ち。そういったものが、本来の「何でもありの世界」のルールと言ってもいいでしょう。武術の世界では、「卑怯」と言われるものがたくさんあります。それは単なる技の次元にとどまらず、考え方や概念そのものが、そもそも卑怯な振る舞いを前提としています。
卑怯なことを行うのが当たり前の世界であり、それを行われても対処できるようにあらかじめ考えられている。そこが武術の面白いところであり、同時に怖さであるとも考えます。
そして、この考え方は、この競争社会において様々な応用ができる立派な社会通念として通用するものになります。
大企業はその資本力によって、中小企業などを簡単にコントロールすることができます。そこには「平等だから」とか「同じルール、同じ資本で競い合う」という概念は存在しません。
にもかかわらず「正々堂々」という言葉があったり、そういった姿勢を強要したりするのは、やはり強者の理論です。そのルールで戦うならば、弱者が負けるのは道理と言えます。
それに対する対応策として、物、人、世界のルールを知った上で、そこだけにとらわれないという自由な概念を持つことが大切になります。
そして、分かっているけれども、それをどうやっていくか分からないという方のために。
すでに始まっているという「先手」という概念を、まずは自分自身に落とし込み、常に相手の先を読むような考え方や、それを体現することが、これから生き抜く上で重要なものの一つだと考えます。
「卑怯を知る、卑怯を学ぶ、卑怯から逃れる」
そういった概念を持つことで、穏やかに豊かに生きていくことも一つ可能になります。そのようなことを学べる武術というものは、これからの時代に必要なものだと切に思います。誰でも好きなことややりたいことを全うし、天寿を全うできる世界を作っていきます。
あなたの日常が、少しでも深く、芯のあるものになりますように。
立芯《旅する姿勢家》
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