武術の世界には「触れているのに触れない」という不思議な表現があります。

これは決して魔法ではなく、高度な身体操作が生み出す物理的な事実です。

通常の人間は相手に触れられると無意識に「抵抗」や「反発」のスイッチが入ります。

しかし武術的な用法では相手の防衛本能を刺激しません。

相手に「触れられた」と脳が認識する前にその内側へ浸透していくような感覚です。

相手を反応させない。

生存本能としての反射を起こさせない。

この静かなる接触こそが「芯」が整った者の成せる技です。

この技術は単に戦いのためのものではありません。

介護の現場や日常のコミュニケーションあるいは大切な人に触れる瞬間。

あらゆる場面でこの「反応させない手」を活用することができます。

力みを取り除き自分自身の軸が澄み渡ることで初めて手は優しさと鋭さを両立させます。

相手と争うのではなく調和しながら導く。

それこそが利他の精神に基づいた身体の在り方ではないでしょうか。

立芯|身体の土台をつくる姿勢家