人生論

消防の常識は、世間の非常識2

消防の経験は今の生き方に、根深く影響しています。

「準備8割、現場2割」という言葉があります。

どんな状況でも、準備が8割を決める。それを怠ると、現場でとてつもなく大変なことになるという意味合いです。消防の世界では、これが文字通り命に関わります。

災害が起きると、ほぼ1分以内に着替えを終え、車に乗り込んで出動しなければなりません。防火衣の着方が曖昧だったり、携行すべき装備の準備が不足していれば、それだけで多大な時間を費やしてしまいます。

だから消防士が日頃やっていることは、単に動作を速くする練習ではありません。どのような事態が起こっても即座に対応できるよう、準備を完遂させた状態を常に維持しておくことです。

防火衣を脱いだら、次に着られる状態できれいに整えてその場に置く。これがデフォルトになっています。車内に保管する場合も、しわくちゃに詰め込むのではなく、すぐ着られる状態で収納されている。そういう細部の積み重ねが「準備を維持する」ということです。

一事が万事。

新米のころ、僕はベテランの動きが不思議で仕方ありませんでした。特に慌てる様子もなく、ゆっくり動いているように見えるのに、普通に動いている人の何倍も効率よく準備を整えて現場へ向かっていく。「あの速さは一体何なんだ」と研究し続けたことが懐かしいです。

武術で言えば、先手をすでに取っている状態です。慌てている人はまだ後手に回っている。落ち着いている人は、すでに先を生きている。

これは消防という特殊な世界だけの話ではありません。日常生活でも、スポーツでも、芸術でも、事業でも、全く同じことが言えます。身体も心も、整えておくことで穏やかに構えていられる。

自分が想像できる範囲のすべてを備えた上で、あとは臨機応変に。何が起こるかわからない中でも、その都度ベストの判断を下していく。

準備とは、未来への先手です。

あなたの日常が、少しでも深く、芯のあるものになりますように。

立芯《旅する姿勢家》

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